2回にわたって、勉強を続けるための3つのポイントと学力の土台となる4つの基礎力について話しました。今日は学習トレーニング(勉強)そのものの効率化についてお話ししたいと思います。
つまり、勉強を要領よくやるにはどうしたらいいのかということについてです。
実は、このことを教えるのが塾の指導項目の重要な一つなのですが、口でいくら伝えても実感がわかないというのが教わっている側の感覚なのではないかと思います。だって、すぐに飲み込めて実行できれば誰でもが秀才になれるのですからね。
それでも、伝えていくことが仕事ですので話を続けましょう。
よく、大学受験のために毎日10時間以上勉強して難関大学に合格したみたいな体験談を見かけますが、この体験談を読んだ人は勉強時間を増やせば比例してテストの点数が上がるかのように錯覚しているのではないでしょうか。
確かに合格者の体験談なのでたくさん勉強したことは本当ですが、不合格者の中にも同様の時間をかけていた人もいただろうし、他の合格者の中にはそれほど時間をかけなくても点数を伸ばすことができたという人もいると思います。大切なのは、量よりも質なのです。つまり、どれだけたくさん勉強したかよりもどんな勉強をしていたかが大切なのです。
長年子どもたちを見てきて思うのは、確かに要領のいい子と悪い子がいるということです。
ここでいう要領がいいというの決して悪い意味ではありません。適当に手を抜くとか、ずる賢く立ち回るという意味ではなくて、効率よく学習成果を身につける方法を体得しているという意味です。
そして、要領のいい子はたいていよい成績を取っています。
では、どうすれば要領がよくなるのか。これはなかなか一言で説明できないのでこれからも機会があるたびに継続的に説明を加えていきたいと思います。今日お伝えする内容はその中の一つだと思ってください。
こちらの塾では、小学生の学習時間が90分、中学生以上の場合は2時間以上机に向かいます。一日の学習を終えて教室から出て行った後、机の上に消しゴムのかすが残ります。その消しかすの量を幾度が観察していれば、要領の良しあしがある程度判断できます。毎回のように消しかすが多く出る子はえてして要領が悪い子です。
消しゴムを使うのは、当然間違えたところを修正するためです。要領の悪い子は常に消しゴムで修正を繰り返します。国語の記述問題を間違えると自分の解答を消して赤ペンで模範解答を書き写します。計算問題を間違えると式や答えを消して最初からやり直したりします。
でも、要領のいい子は間違えたところを慌てて消しゴムで消すことはしません。国語の記述問題を間違えると自分の誤解答の横に赤ペンで模範解答を書き写し、自分の解答と見比べます。計算問題を間違えると式や答えを消さずに、修正する箇所を発見してから、ノートの新しいページにやり直しをします。
つまり、要領の悪い子は間違えると、すぐにリセットボタンを押して、自分のミスの原因を探らずに再チャレンジしたり、次のステージに進んだりしようとするのです。だから、同様の間違いを繰り返します。性格的に、自分のミスを隠したがる子、人からの助言を受け入れにくい子、極度に周りを気にしている子、他の子より遅れることを嫌がる子などに特にその傾向がみられるようです。
では、どうすれば効率がよくなるかというと、人間は誰でも間違いをするものだということをまず素直に受け入れることです。そして、その間違いを繰り返さないために学習トレーニングをしているのだと自覚することです。つまり、自分の間違いは消さずに残し、いつでも再チェックできるようにして、同じ間違いを繰り返さない手順を習得するためのトレーニングをその後に続けるのです。
これを体得してもらいたくて、よく小学生に「計算ミスは消さないで、別のところにやり直しはしなさい。」と指示を出します。でも、その通りにできるようになる子もいれば、性格的に難しい子もいますね。いつか気づければいいかなと思って、幾度も同じ指示を繰り返していますが…。
