中学3年生が志望校を選択するとき、よく迷う問題があります。今の成績で余裕を持って入学できる高校を選ぶべきか、または少しでもレベル上位の高校へ進学したほうがいいのか、ということです。
どちらの選択にも考慮しなければならない点があります。それについてお伝えしたいと思います。
ところで、この選択に先立って中学3年生に考えておいてほしいことがあります。それは、高校へ入学後どのような高校生活を送り、将来はどういう形で大学へ進学するのかということです。まだ高校に入学もしていないのに大学のことを考えるなんてできないと思うかもしれません。でも、この将来像は高校選びに大きく影響してきます。
では、具体的に高校レベルの選択で考えるべき点についてお話ししたいと思います。
今回は、今の成績で余裕を持って入学できる高校を選ぶことのメリットとデメリットについてお伝えします。
今の成績で確実に入学できる高校を選択しようとしている受験生は、余裕を持って入学して進学後も校内で上位の成績を維持していくことをイメージしていると思います。確かに余裕を持って入学をすると最初からアドバンテージがあることになります。気持にも余裕ができるでしょう。だから、高い成績を維持していくことは十分可能だと思います。これは大きなメリットです。
しかし、そこに落とし穴があります。高校生活は新たなステージです。無計画に高校生活をスタートさせると、将来の展望をしっかり持って入学してきた同期生たちに次々の追い越されていく危険があります。入学当初のアドバンテージを維持するためには次のことをよく考えなければなりません。
入学当初は上位の成績だとしてもそれを3年間維持するにはそれなりの努力が必要です。では、その努力はどのような目的で必要だと考えているのでしょうか。目的がなかったり、ただ漠然とそのほうが有利だろうからと考えているとまもなく成績が下降していく心配があります。だって、高校生活は勉強ばかりではないですよね。部活やら行事やら、他にも様々な誘惑が待ち構えています。
上位の成績を取り続けている高校生たちの多くは、大学進学を考えていると思います。それも推薦で進学したいと考えていると思います。一般入試で受験するならば高校の成績を考慮する必要はありませんが、推薦は高校の成績から算出される評点が推薦の基準となるからです。
つまり、余裕で好成績が取れる高校に進学すれば、推薦で大学へ進学するのにとても有利なのです。だから、推薦で大学へ進学することを考えているならば、今の成績で余裕を持って入学できる高校を選択するのもよいと思います。
ただし、これには考慮しなければならない幾つかの前提があります。
推薦の制度には、指定校推薦と公募推薦があります。指定校推薦では校内選考で選ばれればほぼ間違いなくその大学へ進学できます。一方、公募推薦では、評点が推薦の基準を満たしていても大学の選抜試験を受けなければならないのです。
そうなると当然、指定校推薦を選択したくなりますよね。そこで、次の問題が生じます。進学した高校に自分が行きたい大学の指定校推薦があるのかどうかです。高校に入学する前に自分の行きたい大学を選ぶことはほぼ無理です。でも、たくさんの指定校推薦枠を持っている高校に進学すれば選び放題になり、その中には自分が行きたい大学は入っている可能性が高いですよね。
この指定校推薦は各高校の進学実績に基づいて大学から高校へ推薦依頼が届きます。だから、進学実績の高い高校ほど指定校推薦枠が多いことになります。
今春のGMARCHの合格者を延べ人数で比較してみると、茅ヶ崎北陵高校で合計約150名、鶴嶺高校で約30名、茅ヶ崎高校で約10名です。この実績から指定校推薦が決まるとすれば、高校によって明らかに推薦枠の数やレベルに差が出ることがわかります。
つまり、進学する高校の選択次第で指定校推薦の選択肢が増減することを知っておいてほしいのです。安易に高校を選ぶと、指定校推薦で進学できる大学を見て愕然とするかもしれません。
次に、知っておいてほしいことは、高校生活の環境です。環境と言っても自然環境や施設のことを指しているのではありません。同級生や先輩たちのことです。先ほども言いましたが、高校生活で部活やクラス行事・学校行事を体験することになります。この体験を通して親しい仲間を作ったりします。または相談しやすい先輩と付き合うようになったりします。その中でどれだけ同じ価値観を共有できるかを考えなければなりません。
例えば、偏差値60を超える進学校の場合、ほとんどの在校生は大学進学を前提に高校生活を過ごしていると思います。その中で切磋琢磨して難関大学へチャレンジする気概も生まれてくるかもしれません。一方、偏差値50前後の高校の場合、進学を考えるにしても大学かまたは専門学校のどちらかという選択になってくるでしょう。最初から進学をあきらめている同級生もいるかもしれません。
つまり、進学する高校の選択次第で同じ価値観を共有できる仲間の作りやすさに差がでるということです。たまたまできた友人が推薦で大学へ行こうとは思っていない、そもそも大学へ行こうとさえ思っていないことも十分にありうるということです。
この場合、基本的にはマイペースで机に向かえる精神力があれば、進学を優先しない同級生の遊びの誘いに惑わされることはないでしょう。または、強いリーダーシップを持っていて学年の中でトップレベルの仲間を集めて日頃の行動を共にするようにできれば、その中で切磋琢磨できるので心配はないと思います。
それができなければ、成績を維持して推薦で大学へ進学するという入学当初に抱いていた夢のことはすっかり忘れて、日々の高校生活の中で周囲に染まっていく可能性も否定できません。
もし余裕を持って入学することができる高校を選択するのであれば、将来について強い信念を持ち続ける必要があります。