小学生の終了段階で将来の学力がほぼ推測できるということを聞いたことはありますか。小学校の段階でよくできる子は、中学に進んでもよくできる子ですし、大人になってもよくできる人となる可能性が高いと言われます。
では、どの段階ではっきりとした差がでるのでしょうか。そして、その差を挽回して学力を上げるためにはどんな対策を取ればいいのか考えていきたいと思います。
小学生を教えていると、すでに低学年の段階から学力の高さを感じる子がいます。そして、その学力差は高学年に移るほど顕著に拡がっていきます。一方で、低学年時代にあまり目立たなかったのに、高学年になるにつれて学力が見違えるほど上がってくる子や中学生になってから大きく力を伸ばす子もいます。つまり、学力に差が出る段階は一概にいつからとは言えません。でも、高学年になれるほど挽回は難しくなることは確かなようです。対策は早めにということになります。
そこで、学力差にみられる特徴について、今回は国語の科目を通して、次回は算数や数学を通して私なりの見解をまとめさせていただきたいと思います。
一般的に、国語の科目を苦手だと答える小学生や中学生は比較的少数だと思います。それでも国語は苦手だという小学生や中学生の場合は、性格的に他者とのコミュニケーションが苦手で日常生活の会話が少ないタイプか、または国語以外の科目がよくできているのに国語はそれらに比べるとできていないから相対的に国語が苦手だと答えるタイプのどちらかになるようです。
つまり、多くの小学生や中学生は国語をそれほど苦手にしていません。学力的に低い層の小学生や中学生でも国語はできると答えます。このように学力の低い層でも苦手意識がない理由は、日常生活で日本語を使っているので国語を勉強しなければならない科目としてあまり意識していないことやテストで他の科目よりも平均点近くの点数が取れるで安心していることが大きな要因だと思います。
しかし、国語に苦手意識がないのに国語の成績が悪い子たちは全般的に他の科目の成績も低いという傾向があります。だから、国語の成績を伸ばすこと、つまり国語力を上げることは学力全般を上げていくために必要不可欠です。国語力は、根本的に学力の基礎であり、まさに国語力の違いから学力差が生じると言えます。では、その国語力を上げるにはどうしたらよいか。その対策を考えましょう。
先ほども言いましたが、国語は勉強しなくてもなんとかなる科目という固定観念が多くの小学生や中学生にあります。「日本人なのだから、日本語はわかって当たり前」という思い込みは本当に正しいのでしょうか。
残念ながら、そういうわけにいきません。
学習の土台は「読む」「書く」「聞く」「話す」の4つの要素でなりたっているという話を以前のブログでしました。ここでそれを再度確認したいと思います。
今あげた「読む」「書く」「聞く」「話す」はだれでも日常生活で使いこなしている技術です。しかし、これらを技術だと自覚して、さらにこれらの技術を向上させようと意識的のトレーニングしている子供はほとんどいません。かけっこが技術だと意識していないのと同じです。
でも、フィジカルトレーニングで子どもの足が速くなるのと同様に、「読む」「書く」「聞く」「話す」の4つの技術は学習トレーニングで上達させることができます。つまり、普段当たり前にできていると思っている技術をさらに伸ばすことが国語力を伸ばすことにつながります。「読む」「書く」「聞く」「話す」の4つの技術を磨くことが、国語力の基礎トレーニングなのです。では、どんな基礎トレーニングをすればよいのでしょうか。
具体的に、「読む」の学習は、声を出して読む練習から始めてください。小学生の段階では、ご両親が付き合ってください。ピアノの練習に付き合うのと同じだと考えてください。とくに低学年の時期はこの練習を日課にしてほしいと思います。最初はつたない読み方も練習を重ねればうまくなります。技術が上達した証です。ほめて伸ばしてください。それと並行して、読書の習慣が大切になります。多くの文章を読みこなすことが学力アップに必要なことは説明するまでもないでしょう。どんな本を読めばよいかはぜひ周囲の方がアドバイスしてください。
「書く」の学習は、具体的には漢字学習を中心に進めていけばよいと思います。丁寧に書く、読みやすい字を書くことは大切な技術です。また、漢字の学習は語彙力の向上にもつながります。読書も語彙力をつける手段ですが、辞書を引く習慣を伴わないと意味がありません。漢字学習は言葉の意味を含めて定着させていくので語彙力につながります。漢字学習を継続させていく手段として漢字検定を利用するのも一つの方法だと思います。また、文章を「書く」技術をつけるには作文ですが、まとまった文章をはじめから書かせるのではなく、単文を書く練習からスタートしてください。学校では、最初から原稿用紙に作文を書かせようとします。だから、作文嫌いが増えるのです。家庭でできる練習として、例えば、家族の伝言板をつくって毎日全員が必ず一文を書くことを習慣にするのはどうでしょう。そのときご両親は主語を省略しない文を書くようにしてください。できるだけ5W1Hを意識して書いておけば、子どもも意識して作文するようになると思います。
「聞く」の学習は、英語ならばリスニングが学校で行われいるのに、国語ではほとんど行われていません。それは必要がないからではなく、学習として体系化しにくいことが原因のような気がします。実は、国語の教科書の文章が先生方の手元にCDとして音源化されているのをご存知でしょうか。ときどき国語の授業でそれを聞かされたことがあるかもしれません。しかし、生徒たちはもうすでに内容を知っているのでほとんど聞いていません。これでは「聞く」技術の向上に結びつきません。では、どうしたらよいか。まさにこれが家庭での課題となります。例えば、ラジオを聴く習慣を作る、読書とは別に名作物語の朗読CDを聴く、親が子供に「人の話は最後までしっかり聞く」ことを徹底させる、などが考えられるでしょうか。「聞く」技術の向上は、集中力の維持につながる大切な技術だと思いますので考えてほしいところです。
「話す」の学習は、会話で養われると思わないほうがいいかもしれません。「うちの子はおしゃべりが好きだから、話す技術はある」という勘違いが起きるからです。会話は親しい人間関係の中で行われます。だから、そのグループ特有の語法があったり、他者が理解できない用語があったり、グループ固有の省略があったりで、そこには「話す」技術を向上させて、聞く人にわかりやすい話をしようという意識はありません。JKの日常会話についていけない状況、またはアニメオタクの専門用語についていけない状況を想像していただければわかると思います。家族の会話でも、「そこまで言わなくてもわかるでしょう」という暗黙の了解で会話がなりたっていたりします。では「話す」技術を向上させるにはどうしたらよいか。具体的には、スピーチ、面接、インタビューの機会を作るのが最も効果的なのですが、なかなか日常生活では縁遠いですね。でも、機会があれば活用してください。実力のある子役の俳優さんが子どもとは思えない頭の回転の速さをみせて私たちの舌を巻かせることがよくありますが、まさに日頃のインタビューなどでしっかりと鍛えられている成果だと思います。
これらの「読む」「書く」「聞く」「話す」の土台ができあがると国語の成績を向上させるのが容易になります。さらに、これら4つの技術はその他の科目の学力の向上にも大きく影響します。これらの技術が身についた段階から小学生や中学生の学力が向上し始めます。
さて、次の段階として国語の成績をあげるための国語力のアップについてです。国語力を総合的に上げていくためには様々な国語の文章問題演習をすることが大切です。このとき定着させたいポイントがいくつかあります。例えば、設問で何を問いかけられているのかを理解させて、その答え方を覚えさせることです。具体的なものとして、「なぜ~」と問われている場合、「~から。」とか「~ため。」と答えることを覚える必要があります。でも、普段の会話で「どうして遅刻したの。」「途中で転んじゃったんだ。」という会話が成り立っているために、国語の問題「なぜ遅刻したのですか。」の問いに「途中で転んだ。」と答えてよしと小学生は考えてしまいます。国語の問題で「なぜ」と尋ねられたときの答え方を教えて覚えさせないと、いつまでも不正確な解答を繰り返します。このような知識を教科書や問題演習を使って教えることが学習指導ということです。学校では学習指導がどうしても一通りになりがちです。ですから、定着させるためには個別に反復演習をさせることが必要です。この反復演習ができている子とできていない子の間に国語力の差が生まれ、それが国語の成績に反映されることになります。
国語の基礎トレーニングはすべての学力の土台作りになります。そしてその基礎の上に学習指導された知識を積み重ねていくことが国語の学習になります。国語は勉強しなくてもできる科目という思い込みをなくして、基礎トレーニングから知識の定着までをしっかりやっていきましょう。
